- 自己破産と個人再生の特徴
- メリット・デメリットを比較
- 自己破産向きの人・個人再生向きの人
生活が困窮して支払いが厳しい状態になり、法的手続きを選択する場面で、自己破産するか個人再生にするか迷う事があります。
それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、どういった人に最適かお伝えします。
自己破産と個人再生の特徴

自己破産は債務整理の最終手段の法的手続きになります。
それに対して個人再生は財産を残せるという特徴があります。
今後も継続的に支払い不能状態である場合は、自己破産を選択することになります。
自己破産は全ての債務を免除してもらい、ゼロから再スタートする手続きです。
自己破産には2つの手続きがあります。
- 同時廃止
- 異時廃止(管財事件)
配当するような財産が無い場合は同時廃止となり、配当できる財産を所有していれば管財事件となって、破産管財人が選出されます。
一方、個人再生は安定した収入があることが原則で、圧縮した債務を原則3年間で分割して弁済することになります。
個人再生には、次の2つの手続きがあります。
- 小規模個人再生
- 給与所得者等再生
通常は殆どが小規模個人再生手続きを選択する事になります。
給与所得者等再生は、小規模個人再生の救済的手続きになっています。
その理由は、小規模個人再生は債権者の同意が必要なのに対し、給与所得者等再生は債権者の同意が不要だからです。
個人再生の手続きは非常に煩雑で難しく、専門家の力を借りないと容易ではありません。
メリット・デメリットを比較

具体的に、自己破産と個人再生のメリット・デメリットを比較します。
次に挙げる7つの項目をチェックしてみましょう!
- 申立ての要件
- 債務総額の制限
- 免責不許可事由
- 財産の維持
- 資格制限
- 費用面(弁護士報酬)
- 手続き期間(申立て後の期間)
申立ての要件
- 自己破産:支払不能状態
- 個人再生:支払不能の恐れ・継続的な収入がある
個人再生を選択する場合は、継続的な収入があることが絶対条件になります。
圧縮した借金を、返済計画案に基づき原則3年で分割して支払っていくからです。
債務総額の制限
- 自己破産:なし
- 個人再生:あり
個人再生を利用できるのは借金総額5000万円以下となっています。
但し、住宅ローンは含みません。
免責不許可事由
- 自己破産:あり
- 個人再生:なし
【破産法第252条第1項】に該当する場合は、免責許可を得られない可能性があります。
- 債権者を害する目的で、隠匿・損壊
- 不利益な条件で処分したこと
- 特定の債権者に特別の利益を与える行為
- 浪費又は賭博・射幸行為
- 詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと
- 隠滅・偽造又は変造したこと
- 虚偽の債権者名簿を提出したこと
- 裁判所が行う調査に説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと
- 正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと
- 次のイからハの事由において、7年以内に免責許可の申立てがあったことイ破産免責許可の決定が確定ロ民事再生法の認可決定の確定ハ民事再生法のハードシップ免責許可確定
- 破産法で定める義務に違反したこと ※しかし、裁量免責の余地はあります。
財産の維持
- 自己破産:できない
- 個人再生:できる
自己破産は全ての債務を免除してもらえますが、自宅や車などその他財産を手放すことになります。
一方、個人再生は自宅を守れる最大のメリットがあります。
従前通り住宅ローンを返済しながら、その他の債務を大幅に圧縮できます。
資格制限
- 自己破産:あり
- 個人再生:なし
自己破産では破産手続き開始時点から、資格制限が設けられています。
しかし、免責許可決定があれば復権します。
費用面(弁護士報酬)
- 自己破産:個人再生より安い
- 個人再生:高い
各法律事務所によって違いはありますが、自己破産の場合は20~30万円程度が相場になります。
但し、管財事件になれば更に予納金が必要になります。
個人再生の相場は30~50万円程度が多く、住宅ローン特約を利用すると、更に金額がプラスされます。
煩雑な作業が多い個人再生は、その分費用面でも高めの金額になっています。
手続き期間(申立て後の期間)
- 自己破産:短い
- 個人再生:長い
手続き期間は各裁判所によっても違います。
自己破産はだいたい3~6ヶ月と言われています。
管財事件になると、少々時間がかかる事になります。
それに対し、個人再生は6ヶ月~8ヶ月と長くかかります。
手続きが複雑な上、履行テストがあるため期間も長くなってしまいます。
自己破産にも個人再生にも共通するデメリット
- 官報公告される
- 個人信用情報(ブラックリスト)に掲載
- 家族に知られる可能性
官報や個人信用情報(ブラックリスト)への掲載は免れません。
官報は国が発行している新聞で、一般の方が目にする機会は殆どないため、特段の心配はありません。
個人信用情報に掲載されると、5~10年間は新規の借入ができなくなります。
そして、自己破産にしても個人再生にしても、申立てには家族の協力が必要になります。
同居家族の収入証明書や給料明細の提出があるからです。
嘘をついて隠し通すのは難しいと言えます。
自己破産向きの人・個人再生向きの人

自己破産・個人再生、それぞれのメリット・デメリットを確認して来ました。
その上でまとめると、次の通りになります。
【自己破産向きの人】
- 継続的な支払い不能状態
- 残したい財産が無い(自宅・車など)
- 債務額が5000万円を超えている
- 免責不許可事由に該当しない
- 資格制限に関係しない
- 借金を全て清算してゼロからスタートしたい
【個人再生向きの人】
- 安定した収入がある
- 住宅ローンを支払っている
- 残したい財産がある(自宅・車など)
- 債務額が5000万円以内である
- 免責不許可事由がある
- 資格制限に該当する
このように、メリット・デメリットをよく考慮した上で、どちらの法的手続きが最適か、自分に合っているか、決定する必要があります。
どちらも裁判所に申立てする事になるので、ご自身で全て準備するのは容易ではありません。
特に個人再生は複雑な手続きですから、弁護士などの専門家に依頼することをオススメします。
自己破産を選ぶか個人再生を選ぶか、または他の債務整理を選択するかも、専門家とよく相談の上で手続きに進まれる事が先決です。
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