• 自己破産すると生命保険の加入はどうなる?
  • 自己破産したら、加入していた生命保険は解約しないとダメ?

自己破産と生命保険についてのお話です。

もしものときのために役立つ生命保険ですが、自己破産すると生命保険はどうなってしまうのでしょうか?

 

自己破産すると生命保険の加入はどうなる?

 

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自己破産とは、裁判所に申し立てをして、すべての借金をゼロにするという手続きのことです。

 

自己破産ができるのは『支払い不能』となった場合で、負債の額や収入、資産などから総合的に判断されます。

 

すべての債務の支払い義務が免除されるというメリットがある一方で、すべての財産ではないものの、裁判所の定め基準を超えた財産は手放すことになってしまいます。

 

裁判所の定めた基準とは、保有している財産の時価で20万円以上のもので、このような財産があった場合、すべて回収されてしまい、債権者への支払いにあてることになります。

 

またあとでお話していきますが、自己破産をしたときに生命保険に加入されていた場合、その生命保険が個人の財産とみなされてしまう場合もあります。

 

まずは、自己破産すると生命保険には加入できるのか?ということについて、お話していくことにしましょう。

 

自己破産しても生命保険の加入はできる!

自己破産すると、5~10年は個人信用情報機関(ブラックリスト)に載ってしまうために、クレジットカードを作ったり新しいローンを組んだりすることはできません。

 

ですが、生命保険は新たにお金を借りるということではありませんから、自己破産しても新たに生命保険に加入することはできます。

 

もちろん、ご自身の健康状態に問題がなければの場合ですが。

 

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自己破産をしても、新たに生命保険に加入するのに制約などはありませんし、保険会社に自己破産したことが知られるということもありません。

 

老後やもしものときのためにさまざまな備えは必要ですし、生命保険に加入することは今後の安心にもつながりますよね。

 

自己破産したら、加入していた生命保険は解約しないとダメ?

 

さてつぎは、自己破産をしたら加入している生命保険は解約になってしまうのか?という点についてお話していきます。

 

詳しいお話に入る前に、自己破産についてもう少し詳しくお話していきますね。

 

自己破産のメリットとデメリット

自己破産すると、メリットとデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

 

自己破産のメリットとは
  • すべての債務の支払い義務が免除される(免責という)
  • 手続きを開始すると、債権者の強制執行ができなくなる(給料の差し押さえなど)
  • ある程度の財産は手元に残せる

では、デメリットはどうでしょうか。

 

自己破産のデメリットとは
  • 5~10年は個人信用情報機関(ブラックリスト)に残ることになり、新しい借り入れはできない
  • 『官報』(国が発行する機関誌)に住所や氏名が掲載される
  • 免責決定を受けるまでの間は、警備員や士業など一部の職業に就けない

自己破産のメリットとデメリットはこのようになっています。

 

先ほどもお話しましたが、一定以上の価値のある財産(時価20万円以上)は手放すことになり、財産はお金に換えられて債権者に配当されるということになります。

 

ですが、自己破産のメリットにもあったように、すべての財産を手放さなければならないというわけではありません。

 

この点が、自己破産と加入されている生命保険について関係してくるというわけなんです。

 

生命保険の解約のカギは『解約返戻金』

まず、自己破産をすると、原則として20万円以上の財産価値の認められるものは手放すことになってしまいます。

 

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財産というと、不動産や預貯金などが個人の財産としてわかりやすいものになると思いますが、そういったものだけでなく、生命保険も個人の財産とみなされてしまう場合もあります。

 

といっても、生命保険のすべてが財産とされてしまうわけではありません。

 

ここでカギとなるのが生命保険の『解約返戻金』です。

 

【解約返戻金とは】

積立式の生命保険を解約するときに返金される、これまでの掛け金のこと。

 

解約返戻金がいくらになるかによって、解約となるのかそのまま継続していられるのか、ということになります。

 

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解約返戻金が20万円を超える場合、原則として解約となってしまいます。

 

裁判所で定められている基準が20万円以上のものは手放す必要があるため、生命保険の解約返戻金が20万円以上の場合は、自己破産された方の財産と判断されてしまうわけです。

 

生命保険の解約について

【解約となる生命保険】

  • 積立式:解約返戻金が20万円以上のもの

【継続して加入可能となる生命保険】

  • 掛け捨て式:解約返戻金が0円もしくは20万円以下のもの

とこのようになります。

 

解約返戻金の調べ方

では、加入している解約返戻金がどのくらいなのか、どうやって調べたらいいのでしょうか?

 

解約返戻金は、その保険の加入期間によって金額が異なります。

 

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解約返戻金がどのくらいの金額なのかは、加入している保険会社に問い合わせてみましょう。

 

保険会社に解約返戻金を確認する方法
  • 保険証券で確認する
  • 窓口へ問い合わせてみる
  • コールセンターに問い合わせてみる
  • HPで確認する

各保険会社によって調べ方も異なりますが、上記のいずれかの方法で調べることは可能ですので、まずは保険会社に問い合わせてみましょう。

 

どうしても解約したくない!そんなときはどうしたらいいの?

加入している生命保険の解約返戻金が20万円以上の場合は、原則として、その生命保険を解約しなければなりません。

 

自己破産しても新たに生命保険に加入することは可能ですが、破産された方がが高齢であったり病気を患っている場合は、新しい保険に加入するのはとても難しいですよね。

 

加入していた生命保険に加入し続ける、なにかよい方法はないのでしょうか?

 

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さまざまな制度を利用することで、生命保険を継続して加入することができます。

 

生命保険を継続加入するための方法とは
  • 自由財産拡張制度
  • 保険法の介入権制度
  • 契約者貸付制度

これらの制度を利用して、生命保険を継続して利用することができるんです。

それぞれの制度について、詳しくご説明していきましょう。

自由財産拡張制度

自由財産拡張制度とは、破産法第34条4項で定められている制度です。

 

自由財産拡張制度とは

破産者の個人的な事情により、生活に最低限必要な財産を差し押さえることができない、『自由財産』として認めてもらう制度のこと

裁判所に申し立てる必要がありますが、これによって自己破産をしていても、生命保険の加入を継続できる場合があります。

 

個人の破産の場合全財産を処分してしまうと、破産をしたあとの生活が成り立たなくなってしまうため、生活維持のためにも最低限の財産は破産によって処分しなくてもよいものとして、『自由財産』と呼ばれるものがあります。

 

例えば、通院のために自家用車が必要な場合などにも、裁判所に申し立てをすることで、没収されずに継続して使用できるといった可能性もあります。

 

ですが、自由財産拡張制度については、つぎのような注意点もあります。

 

自由財産拡張制度の注意点
  • 各地の裁判所によって基準が異なる
  • 自由財産と認められるケースが少ない

自由財産の拡張が認められるかどうかについては、生活に最低限必要なものであるかどうかが判断の基準となります。

 

必ずしも、生命保険が自由財産と認められるというわけではありませんので、注意しましょう。

 

保険法の介入権制度

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介入権制度とは、2010年に施行された保険法の制度です。

 

解約返戻金の相当額を保険金受取人などが負担して、一定期間内に債権者に支払いをすることで、生命保険の加入を継続できるという制度のこと。

 

保険会社によっても異なり、各保険会社の取扱商品によっても異なりますが、多くの保険会社で介入権制度を導入されています。

 

介入権制度を導入している保険会社(一部)
  • 損保ジャパン日本興亜
  • ソニー生命保険会社
  • 三井ダイレクト損保
  • 第一生命

などの保険会社が、介入権制度を導入しています。

 

ですが、先ほどもお話したように、各保険会社の商品によって取り扱いは異なりますので、注意してくださいね。

 

また、一般的には、『債権者から解約通知があり、その効力が生じる1ヵ月の間』が期間となっています。

 

この間に、遺族などの保険金受取人が、解約返戻金の相当額を債権者に支払って、それが保険会社に通知されることにより、生命保険を継続して加入できるということになります。

 

契約者貸付制度

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契約者貸付制度とは、解約返戻金と同等額を借入できる制度のことです。

 

保険会社によりますが、解約返戻金を担保としてお金を貸し付けてくれる制度が、この契約者貸付制度です。

 

契約者貸付制度を利用した場合【例】

【解約返戻金が50万円ある場合】

貸付制度を利用して、35万円の借り入れを行う。

(解約返戻金)50万円−(借入した金額)35万円=(解約返戻金)実質15万円

このように、解約返戻金が実質15万円となり、20万円以上の財産として認められなくなるため、継続して加入できるという仕組みです。

 

この方法ですと、少々問題があるかもしれませんが、方法としてありますということで覚えておくといいですね。