- 税金の未納で滞納している場合、どのくらいで差し押さえられる?
- 税金未納で差し押さえられる期間は?
- 差し押さえになった場合は、債務整理するべき?
税金を滞納していると督促状などが送付されてきますが、そのまま放置していると「財産の差し押さえ」になっていまいます。

差し押さえはどのくらいの期間で行われるのでしょうか。
また差し押さえになり、それでも支払いができない場合は債務整理をした方が良いのでしょうか?
差し押さえになるまでの流れなどを説明しながらお話していきます。
納税の義務

納税は国民の義務です。
憲法30条で定められています。
個人でも法人でも税金を納める義務があり、定められた期間に納付しない場合は、税の滞納をしている「滞納者」になります。
給与所得者の場合は、所得税・住民税などは給料から天引きされるので、ほとんど税金の滞納はないかと思います。
- 給与所得者であっても給与以外の収入が年間で20万円以上ある方
- 年間110万円以上の贈与を受けた方
- 個人事業主の方
このような方たちは確定申告で納税をしなければなりません。
不動産を所有している方は固定資産税など役所から納付書が送られてくるので、納める必要があります。
そのほか、国民健康保険料や国民年金の税金以外でも差し押さえの対象になります。
税金の滞納分の放置は「滞納処分」を受ける

滞納を放置してしまうと、滞納処分により財産の差し押さえになります。
国税徴収法に基づいて行われます。
滞納し続けて差し押さえになった場合、2つのパターンが考えられます。
- 銀行口座の差し押さえ
- 給料の差し押さえ
給料が入るタイミングで銀行口座が差し押さえられたり、勤務先から市区町村、税務署が直接徴収する差し押さえです。
前者は勤務先へ連絡することはありませんが、給料の差し押さえの場合は勤務先へ事前に通知されます。
税金を滞納したまま放置すると、最終的に財産の差し押さえをされ、公売、または取り立てにより強制的にお金に返させられ税金の滞納分に充てられます。
滞納から差し押さえまでの流れ

地方税を滞納した場合、国税徴収法第5章の規定が準用されます。
※地方税も国税も滞納した後は基本的に同じ流れで滞納処分が行われます。
滞納から差し押さえまでの流れを見ていきましょう。
1.税金の滞納
- 納付期限を1日でも過ぎた場合は滞納
- 納付期限は税種類、自治体により異なる。(納税通知書に記載)
2.督促状による催告
- 納付期限後20日以内に督促状が送られてくる
- 法律上では督促状を発送した日から10日過ぎると財産を差し押さえなければならないとされる。
3.文書、電話などによる催告
- 督促状が送付されても納付されない場合、電話、文書、または訪問による催告がある。
4.財産調査
- 滞納者の身辺調査
- 差し押さえのための財産調査
5.差し押さえ・捜査
- 財産調査を基に差し押さえるべき財産が決定し、差し押さえが行われる
- 不動産などの場合は、自宅・事務所を捜査して差し押さえられる場合もある。
- 滞納者が第三者に対して持っている債権などが差し押さえられる場合もある。
6.登記や通知
- 不動産の差し押さえを受けた場合、差押登記がされる。
- 抵当権者などには差押通知書が送付される。
- 給与の場合は勤務先、銀行口座の場合は金融機関へ差押通知書が送付される。
7.公売・取立て
- 差押後にも完納されない場合には、公売が行われ、債権などは取り立てがされる。
- 換価された金額が税の滞納分に充てられる。
税金の滞納による差し押さえは、法律で定められたものなので裁判所の許可などの必要がありません。
滞納者に対して事前連絡、同意が必要ない行政処分となります。
財産調査で調べられること

差し押さえ前の財産調査では、何を調べられるのでしょうか。
財産調査は国税徴収法第141条に定められた権限です。
以下のようなものが調査されます。
身辺調査
- 所得の調査
- 勤務先、取引先の調査
- 家族構成
- 戸籍の調査(引越し履歴も調査対象)
財産調査
- 給料
- 自動車の有無
- 銀行口座
- 生命保険
- 不動産謄本の入手
- 売掛債権など
逆に差し押さえることができないものもあり、国税徴収法第75条で定められています。
国税徴収法第75条により
生活や営業に欠くことができない財産は差し押さえることができない。
とされています。
具体例)衣服・家具・台所用具・畳および建具、生活に必要な3ヶ月間の食料および燃料、収入を得るために必要な道具、商品を除く業務に欠くことができな器具、実印など。
差押を解除することはできる?

財産の差し押さえが行われた場合、どのようにすれば解除できるのか。
原則として完納しない限り差し押さえの解除はされません。
万が一、災害、病気、失業などで税金お支払いが困難になった場合、納税の猶予、減税などを受けられる可能性があります。
納税期限前、督促状による催告が来た時点で、税務署、納税課などに相談しましょう。
債務整理をするべき?税金の支払いもなくなる?

借金を返しながら税金を納められていれば問題ないですよね。
しかし、借金の返済が先で税金は後回し・・・という方も多く、滞納してしまうのですよね。
税金を滞納している状況で、差し押さえになるかもしれない場合は、債務整理すれば全てチャラになるのでは?
という考えをお持ちの方もいるかもしれませんね。
自己破産をすると借金の返済はしなくて済みますからね。
しかし、税金はそうもいきません。債務整理をしても税金は支払わなければなりません。
年金や国民健康保険も同じで、税金の支払い義務は変わりません。
税金、年金、国民健康保険などは「非免責債権」とされているためです。
支払いは債務整理をしたとしても逃れられないのです。
滞納者が差し押さえを受けないための対策

財産の差し押さえを受けないための方法はあります。
それは、税金の滞納額を分割で払い納税した実績を積み重ねることです。
税務署や市区町村に支払いの分割を交渉し、そして納付期限を確実に守り支払いましょう。
滞納している住民税の分割払いを市役所に交渉して口約束をしたけれど、納付書は自宅に送られずに給料が差し押さえられた。
このようなケースもあります。
分割払いを交渉するなら、日本国憲法第25条の生存権が味方をしてくれるでしょう。
憲法第25条を一部抜粋しますが、
「全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
税務署との交渉で分割払いの金額を設定をする際、生活費を犠牲にしなければならない心配をする必要はないのです。
生存権を脅かすような徴収は憲法を違反します。
総務省でも、財産なく生活に窮する滞納者の徴収を猶予することを「地方税法の施行に関する取り扱いについて」中で方針として打ち出されています。
税金に時効がある?

ネット上では税金に関してさまざまな質問を見かけます。
その中でも多いのが、「税金の時効」についてです。
時効が過ぎれば税金が免除される・・・としたら滞納者には興味深い話。
税金の滞納額は、国や地方自治体に対する債務であり、時効はあります。
通常の借金では時効で免除されるようなことはありませんよね。
しかし、税金の場合は時効の援用が不要です。時効が過ぎれば自動的に税金が免除されます。
国税にも地方税にも税金の種類によっても異なりますが、3年~7年の時効年数が設けられています。
ですが、そう甘くはありません。事実上には税金に時効なんて存在しないのです。

それは、税務署や市区町村が督促状を送付するから。
督促状は単に税金の支払いを催告しているだけでなく、滞納額に対する時効を法律的に認めない役割を持っているのです。
督促状が届いた日から時効の期間が新たに始まるため、必ず税金は納めなさいということなのです。
まとめ
税金の滞納を放置していると督促状による催告があり、それでも支払いなどの対処が行われない場合、差し押さえなどの通知が送付されてきます。
税金の滞納が溜まり、支払うことができず債務整理を行ったしても、税金の支払い義務までチャラにはなりません。
もしも手元に督促状が届いているなら、債務整理を検討する前に税務署や市区町村の収税課などへ行き、分割などの相談を行いましょう。
税金の支払いを滞納しないことが1番良いのですが、期限を過ぎて支払いができないという場合は、早めに相談することをおすすめします。