- 会社のお金を使い込んだら?
- 使い込みを理由に離婚はできる?
- 妻の会社に対する責任は?
ある日突然、自分の夫が会社のお金を使い込んだと知ったら、ショックですね。
使い込んだお金の返金や、使い込みを理由に離婚はできるのでしょうか?
Contents
会社のお金を使い込んだら?

会社のお金を使い込むなど、ジョッキングな話しです。
使い込みは金額に拘らず犯罪なのをご存知ですか?
会社のお金の使い込みは、業務上横領罪という刑事事件になります。
(業務上横領)刑法第253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
引用:刑法
占有が業務であることから、他の横領罪よりも業務上横領は重い刑罰になっています。
一般的に会社は、刑事罰にすることよりも、お金の回収を最優先に考える場合が多いでしょう。
少額であれば一括返済も可能ですが、数千万円になると、なかなか一括返済は困難です。
そうなると話し合いで分割払いなどの取り決め(示談)をしますが、親族に連帯保証人になってもらうなど安全策を講じます。
また、入社時に身元保証人になっている人がいれば、連帯して責任を負う可能性があります。
懲戒解雇は当然?
各会社の規定や考え方にもよりますが、会社によってはお金の使い込みの事実を隠したい場合もあります。
管理体制が杜撰だったと、マイナスイメージを持たれたくない会社があるからです。
いや許される事ではないから、告訴し懲戒解雇が当然という会社もあるでしょう。
官公庁などの場合は、コンプライアンス上事件を表面化し、厳格に処分する傾向にあります。
返金してもらうことを考慮し、再就職しやすいように自主退職扱いにする会社もあります。
その辺りは、各会社の考え方次第になります。
捜査は家族にも及びます
会社が事件化した場合、当然に家宅捜索が行われます。
場合によっては、家族も取り調べで呼び出しの可能性があります。
そうなれば、精神的にも大きなダメージを負うことになります。
自己破産は可能?
使い込んだお金は既に手元には無く、これから数千万円を支払って行くのは、実際とても厳しい状態になります。
いっその事、自己破産してしまおうかと考えたとします。
しかし通常の借金とは違い、使い込んだお金は賠償責任のため、自己破産は出来ません。
(免責許可の決定の効力等)破産法253条1項
免責許可の決定が確定したときは、破産者は破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
- 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
- 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
- 次に掲げる義務に係る請求権
(イ)民法第752条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
(ロ)民法第760条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
(ハ)民法第766条(同法第749条・第771条及び第788条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
(ニ)民法第877条から第880条までの規定による扶養の義務
(ホ)イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
- 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
- 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
- 罰金等の請求権
引用:破産法
業務上横領は破産法253条1項2号の、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当し、免責が得られません。
使い込みを理由に離婚はできる?

夫の使い込みを知り、今後大金を返済していくとなったら、通常は離婚を考えてしまう人が多いでしょう。
刑事告訴されたら、犯罪者となってしまいます。
犯罪者と今後も今まで通り生活していく覚悟は、並大抵ではありません。
子供がいれば、子供が学校でイジメにあわないか心配になります。
事が事だけに誰も攻める人はいないでしょうし、離婚すること自体問題はありません。
日本には4つの離婚の種類があります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
第三者が介入せず、当人同士の話し合いで離婚を決めるのが協議離婚です。
調停離婚は裁判所に申立てし、調停委員が間に入り離婚の話し合いをします。
実際に事件を起こした夫が離婚を拒むことは無いでしょうが、総合的に判断して離婚した方が良いと裁判官が判断した場合は、審判離婚になる可能性もあります。
それでも夫が納得しない場合は、離婚裁判へ進行します。
裁判離婚には「法定離婚原因」が必要
裁判離婚に限り「法定離婚原因」というものが必要になります。
(裁判上の離婚)民法第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
引用:民法
会社のお金を使い込んだ場合は、「5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当します。
使い込みという事実が明確なので、離婚が認められる可能性は非常に高いでしょう。
夫は今後、使い込みしたお金を返済していくという大変な状態ではありますが、財産分与や養育費の取り決めは、しっかりと定めたいところです。
妻の会社に対する責任は?
家族だからと、会社は妻に対する請求権はありません。
先程も少し触れましたが、入社時に身元保証人になっていると、連帯責任を問われる場合があります。
しかし、「身元保証書」の内容によってはこの限りではありません。
身元保証法
第1条
引受、保証その他どのような名称であっても、期間を定めずに被用者の行為によって使用者の受ける損害を賠償することを約束する身元保証契約は、その成立の日より3年間その効力を有する。但し、商工業見習者の身元保証契約については、これを5年とする。
第2条
1.身元保証契約の期間は、5年を超えることはできない。もしこれより長い期間を定めたときは、これを5年に短縮する。
2.身元保証契約は、これを更新することができる。但し、その期間は、更新のときより5年を超えることはできない。
第3条
使用者は、左の場合においては、遅滞なく身元保証人に通知しなければならない。
1.被用者に業務上不適任または不誠実な事跡があって、このために身元保証人の責任の問題を引き起こすおそれがあることを知ったとき。
2.被用者の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任を加えて重くし、またはその監督を困難にするとき。
第4条
身元保証人は、前条の通知を受けたときは、将来に向けて契約の解除をすることができる。
身元保証人自らが、前条第一号及び第二条の事実があることを知ったときも同じである。
第5条
裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化その他一切の事情をあれこれ照らし合わせて取捨する。
第6条
本法の規定に反する特約で身元保証人に不利益なものは、すべてこれを無効とする。
附則
本法施行の期日は、勅令(昭和8年 勅令249号)によってこれを定める。
本法は、本法施行前に成立した身元保証契約にもこれを適用する。但し、存続期間の定めのない契約については、本法施行の日よりこれを起算し、第1条の規定による期間、その効力を有する。存続期間の定めのある契約については、本法施行当事における残存期間を約定期間とする。もし、この期間が5年を超えるときは、これを5年に短縮する。
身元保証法の通り、「身元保証書」に期間の定めがない時は3年間。
期間を定めていても5年間になります。
自動更新もないため、最長でも5年を経過していれば、例え「身元保証書」に署名押印していても、損害請求はできないことになります。