- 日常家事債務とは?
- 妻の使い込みの許容範囲
- 生活費の使い込みは離婚理由?
妻の生活費の使い込みが原因で離婚をしたい場合、離婚理由として成立するのでしょうか?
どのような場合を使い込みと言うのか、離婚は可能なのか詳しく確認していきましょう。
日常家事債務とは?
日常家事債務?聞き慣れない言葉ですね。民法では、日常の家事に関する債務は夫婦が連帯して支払うと定めています。
(日常の家事に関する債務の連帯責任)民法第761条
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
引用:民法
この日常家事債務の範囲が妻のお金の使い込みと深く関わってくることになります。
日常家事の範囲は、主に衣食住が中心となりますが、収入や職業など各家庭の経済状況で大きな違いが出てきます。
また、教育費や交際費、医療費なども日常家事債務に含まれ、家庭生活を営むうえで必要な費用になります。
繰り返しますが、民法では家事に関する債務は、夫婦が連帯して責任を負うとしています。
具体的にお話すると、日常家事債務に当たる費用をカード払い(借金)していれば、夫婦で返済する義務があります。
ですから、妻が使い込みしたお金が日常家事債務の範囲であれば、夫婦で責任があるということになってしまいます。
妻の使い込みの許容範囲
先程もお伝えしたように、日常家事債務は生活上必要な費用という事が分かりました。しかし、各家庭の経済状況で、線引きが難しい点も挙げられます。
さらに問題になるのは、夫婦間の金銭感覚の違いによる場合があります。
夫が妻はお金を使い込みしていると感じても、妻にとっては普通のことであったり、育ってきた環境で価値観も違っています。
この差が婚姻生活の破綻へと結びついたりします。では、明らかに日常家事債務を超えているのは、どういった場合でしょうか?
- 分不相応な買い物(高級なバックや宝石など)
- 高級なエステ契約をした
- 浪費・ギャンブルのための借金
- 外車を購入 など
夫婦が共同生活をする上で特段必要がなく、一方の贅沢品とみなされるものは、夫婦で連帯責任を負うことはありません。
また、夫婦だからと言って、全てが共有されるものでもありません。どういった事かというと、次にご説明する夫婦財産制度に関係しています。
夫婦財産制度がある
民法では夫婦財産制度というものがあります。夫婦財産制度は契約財産制と法定財産制の2つに大別されます。
契約財産制は、例えば大きな財産を有している場合(不動産や預貯金など)、婚姻前に契約を締結し公正証書などにしておきます。
これは熟年結婚などに多く、後々の相続に関係してくるため、トラブル回避に公正証書にしておく事がよくあります。
また、遺産相続などで不動産などを手にしていた場合もあります。
一方、法定財産制は結婚期間中に夫婦の協力によって得た財産です。法定財産制には結婚生活に必要な費用や、日常家事債務が含まれます。
民法では法定財産制について次の3つが規定されています。
- 婚姻費用の分担(760条)
- 日常の家事に関する債務の連帯責任(761条)
- 夫婦間における財産の帰属(762条)
民法の760条では、夫婦の内部関係について規定していますが、民法761条は外部に対して規定しています。
初めに説明したように、妻の使い込みの許容範囲は、一般常識的な家庭生活において必要なものであり、それは使い込みとは言わないでしょう。
例えば離婚を決意したとしても、その辺りの判断が難しくなるのは事実です。
生活費の使い込みは離婚理由?

では、実際に妻の使い込みを理由として、離婚はできるのでしょうか?
裁判離婚でなければ離婚は可能です。
日本における離婚には次の4つの種類があります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
簡単に言ってしまうと、離婚理由が問われるのは裁判離婚のみです。
夫婦間で話し合う(協議離婚)、もしくは調停を利用して話し合う(調停離婚)は可能です。
参考までにお話しすると、日本における離婚形態の9割は協議離婚になります。
また、統計によると離婚理由は次の通りです。
- 性格の不一致
- 異性問題
- 暴力をふるう(DV)
- 家族や親族と折り合いが悪い
- 精神的虐待
- 生活費を渡さない
- 浪費
- 家庭を省みない
- 異常性格
- 同居に応じない
離婚原因でよく耳にするのが「性格の不一致」で、圧倒的に多くなっています。ベスト10の中にも浪費があり、生活費の使い込みも含まれると解されます。
信頼関係が失われた結果、婚姻生活を継続しがたいと判断し離婚へと踏み切ったのでしょう。
このように、浪費・生活費の使い込みを原因として離婚する人も多いという事が分かります。
但し、裁判離婚では「法定離婚原因」が必要になります。
(裁判上の離婚)民法第770条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1.配偶者に不貞な行為があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
引用:民法
生活費の使い込みは、「5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当しますが、十分な立証が必要になります。
その使い込みの範囲が日常家事債務に当たれば、離婚は厳しくなってしまうでしょう。
例え離婚が認められたとしても、日常家事債務に当たれば借金を夫婦で連帯して支払うことになってしまいます。
協議離婚や審判離婚では「法定離婚原因」は問われませんが、やはり日常家事債務に該当すれば、例え離婚するとしても夫婦で連帯して借金を支払う事になります。
さいごに
妻の使い込みが原因で離婚はできるか?についてお伝えしてきました。裁判離婚以外は理由を問わず、両者の合意で離婚は成立します。
もし借金があったとしても、日常家事債務での借金以外は、離婚時の財産分与にも関係しません。

連帯債務を負う必要性は無いということになります。
離婚は肉体的にも精神的にも、大きな負担を背負う事になりますが、経済的な負担を負わないように注意が必要です。