- 住民票を移さないメリット・デメリット
- 荷物の処分について
- 夜逃げの生活
夜逃げをする場合は、居場所がわからないように住民票を移動しないのが基本です。
着の身着のまま、または最低限の荷物を持って夜逃げする場合が多いようです。
夜逃げ後の生活にスポットを当てて、詳しくご紹介していきます。
住民票を移さないメリット・デメリット

住民票は日本で生活していくには、必要不可欠なものになります。
住所地で殆どの証明書類を取得できる他、何をするにも住民票が基準になります。
住民票を移さないメリット
当然にメリットは、現在の所在地がバレない可能性が高くなることです。
住民票を移さないデメリット
- 各種証明書類が取得できない
- 郵便物の受取り
- 選挙権(投票のハガキの受領ができない)
- 免許証の更新
- 国民健康保険の加入
- 子供の学校(転校手続き)
- 就職先への届出
自分1人であれば何とか生活できるかもしれませんが、家族がいると、特に子供がいると健康保険証や転校手続きなど、絶対的に必要な場面が出て来ます。
就職する際も、住所地と居所が違っていると、不審に思われる可能性が出て来ます。
そうなると、不安定な日雇いの仕事に就くしかなくなってしまいます。
住民票には職権消除がある!
意外に知られていないかもしれませんが、住民票には「職権消除」というものがあります。
該当の住所地に居住していないと役所が判断すると、職権で消除されてしまいます。
住所地に長期間不在の場合に、そのような適応があります。
しかし、職権消除から5年以内であれば、「転出証明に準ずる証明書」を取得できます。
夜逃げをして身を隠していた場合に、もしも住民票を職権消除されても、5年以内であれは問題ありません。
「転出証明に準ずる証明書」を持って新しい住所地の市区町村役場に出向き、転入手続きが出来ます。
荷物の処分について

先程もお伝えしたように、夜逃げの場合は着の身着のまま、もしくは最低限の荷物を持って家を出ることになります。
家具などを運び出していては、借金取りに直ぐに見つかってしまうからです。
では、どこに身を隠したらよいでしょうか?
親戚や知人のところでは、いつか見つかってしまう危険性があります。
昔から、「他人を騙すにはまず見方から」と言われているように、どんなに親しい仲でも、頑なに行先は伏せるべきでしょう。
何処から漏れてしまうか分かりません。
数日間であれば、ネットカフェやカプセルホテルなども便利です。
家具や家電の付いているマンスリーマンションも住むには重宝しますが、その分家賃が割高になります。
家賃を支払えるだけの収入を確保できなければ、それも厳しいでしょう。
まずは働く場所を確保するのが先決です。
残してきた荷物はどうなるの?
残された家具や家財を、大家さんが勝手に処分する事は法的に禁止されています(自力救済の禁止)。
強行に行えば、器物損壊罪や所有権侵害になってしまいます。
当然に断りもなく部屋に入る事は、不法侵入になります。
大家さんとしては非常に迷惑な状態でしょう。
保証人がいれば保証人へ連絡が行き、通常は保証人立会いの元、マスターキーなど何らかの方法で開錠します。
これは、中で死亡などしてはいないか、安否確認のためです。
荷物を処分する方法
さて、残してきた荷物の処分についてですが、これは法的に手順を踏んで処分する方法があります。
大家さんは建物明渡し請求と、未払賃料の支払いを求める民事訴訟を提起することになります。
訴状の送達先は住民票の住所になります。
当然夜逃げしているので受け取ることが出来ません。
その場合は「公示送達」と言って、裁判所の掲示板に一定期間掲示することで、送達したものとみなします。
(公示送達の要件)第110条
1.次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
- 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
- 第107条第1項の規定により送達をすることができない場合
- 外国においてすべき送達について、第108条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
- 第108条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後6月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2.前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3.同一の当事者に対する2回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第1項第4号に掲げる場合は、この限りでない。
引用:民事訴訟法
公示送達の後、判決を得て強制執行を行うことになります。
この強制執行をもって、荷物の処分ができます。
夜逃げをすることは、大家さんにも多大な迷惑をかけてしまうのを理解しましょう。
夜逃げ後の生活

夜逃げはほんの一時だけ、現実から逃げるだけでしかありません。
酷い取立てから逃げたい!これ以上どうにもならない!そう思って夜逃げしても、決して人生のリセットは出来ません。
まともな仕事にも就けず、いつも周囲を気にして生きるだけです。
夜逃げでは平穏な日常が戻って来ないからです。
夜逃げをしている間も、遅延利息は日々増えています。
借金の消滅時効
確かに時効を待つという方法もあります。
貸金業者からの借金は、弁済期または最後の返済から、5年の経過で消滅時効が成立します(商法522条)。
個人からの借金は10年の経過になります(民法167条)。
銀行は5年になりますが、住宅金融支援機構や信用金庫は商人とはみなされないとし、10年となります。
しかし、消滅時効の中断というものがあります。
(時効の中断事由)第147条
時効は、次に掲げる事由によって中断する。
- 請求
- 差押え、仮差押え又は仮処分
- 承認
引用:民法
時効の中断事由【請求】
この場合の請求は、裁判上の請求になります。
さらに判決が出ると、5年であった時効期間が10年に延びます。
先程お伝えした「公示送達」による判決だと、本人が知らない間に時効が延びることになります。
また、催告によっても時効が中断することがあります。
時効の中断事由【差押え・仮差押え又は仮処分】
債務者の財産に対して差押え・仮差押え又は仮処分などを行った場合も、時効が中断してしまいます。
時効の中断事由【債務の承認】
どういったことかと言うと、借金の存在を認めると、その時点からまた時効までの5年間がスタートします。
当然返済をすれば、借金を認めたことになります。
よく消費者金融などで、「利息だけでも入れて下さい」と言う会社があります。
これは、消滅時効させないための予防策になります。
さいごに
このように、消滅時効を待つのは並大抵ではありません。
知らない間に時効が延びている可能性もあります。

結論的に言うと、夜逃げは得策ではありません。
人生のリセットは債務整理でしか得られないでしょう。
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