- 離婚と連帯保証人
- 住宅ローンの扱い方
- 連帯保証人を外す方法
様々な事情により婚姻関係を解消する場合に、問題になるのが夫婦で連帯保証していることです。
離婚と同時に、連帯保証人の解除をすることができるのでしょうか?
離婚と連帯保証人

最も多いのが、マイホームの建築に夫婦で住宅ローンを組む場合です。
通常住宅ローンは、貸し手の金融会社(銀行など)と保証会社の二重の審査が行われることになります。
例えば夫の収入が、今後返済していくには不十分であるとか、勤続年数が浅く不安要素がある場合には、審査を通過しない可能性が出てきてしまいます。
そのような時には、妻の収入も合算した世帯全体の収入で審査をします。
一般的に年収の高い方を主債務者として組まれる場合が多く、妻の方が低ければ連帯債務者、または連帯保証人として住宅ローンが組まれます。
離婚時の住宅
住宅ローンを借入する時には、当然に離婚するなど考えていませんから、連帯債務者や連帯保証人が後々問題になるとは予想もしていません。
さて、いざ離婚となった時に、マイホームをどうするかという問題が起こります。
考えられるのは3つのパターンになります。
- 夫が住み続ける
- 妻が住み続ける
- 売却する
離婚すなわち夫婦関係を解消する際は、財産分与について話し合います。
住宅についても夫婦で協議されることになります。
子供がいる場合は、学校の転校など子供の環境を考慮する必要はありますが、一方が住み続けることで、後々問題化する可能性もあります。
離婚後はそれぞれに事情の変化もありますから、慎重に検討する必要があります。
稀に、離婚時点で財産分与されなかった場合でも、離婚成立から2年間は請求権があります。
(財産分与)民法第768条
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
引用:民法
住宅ローンの扱い方

次は、住宅ローンのある家をどのように扱うのがベストの方法か考えていきましょう。
マイホームを建設する際には、通常は住宅ローンを利用しています。
離婚時の財産分与には、プラス財産もマイナス財産もあります。
その上で、住宅の時価と住宅ローンの残債務額を比較する必要があり、オーバーローンになるのかアンダーローンになるのかで違ってきます。
アンダーローンの場合
アンダーローンは、どちらが住むにしても売却するにしても、特段の問題は起こりません。
ただ、一般的に不動産の名義は住宅ローンを支払っている者になることが多いでしょう(債権者の了承で変更可能な場合もあり)。
完済後に妻の名義にするなど、離婚協議書に盛り込み、公正証書にしておきましょう。
また、住宅を売却する場合には、話し合いで売却代金を分配することになります。
注意するとしたら、夫が住宅ローンを滞納した場合です。
その場合でも売却することで解決は図れますが、もしその住宅に今後も住み続けたいと考えていたら、想定外の結果になってしまいます。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅の時価よりも残債務額が多いことをいいます。
離婚後にどちらが住宅ローンを支払っていくか、どちらが住むかなど、離婚協議の中で話し合うことになります。
マイナス財産なだけに、扱いが非常に難しい問題があります。
例えば任意売却したとしても、債務が残ってしまいます。
余程の余剰金がない限り、現実的に任意売却は難しくなります。
また、夫婦間で住宅ローンについて取り決めたとしても、借入している金融機関が了承するとは限りません。
住宅の登記所有者や債務者、連帯保証人についても、安易に変更は出来ないからです。
しかし、将来的に「完済後に名義変更する」「オーバーローン解消時に売却する」など、夫婦間で取り決めすることは可能です。
離婚協議書の中に、夫婦間で取り決めた事項を盛り込むことは有効になりますが、公正証書にする必要があります。
連帯保証人を外す方法

離婚時に、住宅ローンの連帯保証人をやめたいと思ったとしても、債権者(金融機関)の承諾がないとやめることは出来ません。
よく離婚すれば住宅ローンと関係がなくなるとか、連帯保証人はやめられると勘違いしている人がいます。
しかし、金融会社にとっては、離婚と住宅ローン債権とは、何ら関係がありません。
よって、債権者(金融機関)の承諾を得ることは非常に難しいといえます。
しかし、連帯保証人を解除するために、次のような方法もあります。
- 住宅ローンの借り換えをする
- 別の連帯保証人を探す
- 任意売却する
別の金融会社などへ、住宅ローンの借り換えや組み換えをすることで、連帯保証人を外せる場合があります。
また、別の連帯保証人を探し、金融会社の承諾が得られれば連帯保証人を外せる可能性があります。
しかし、通常は誰も連帯保証人にはなりたくないものです。
例えば夫の親族などが引き受けてくれれば、スムーズに進む可能性があります。
但し、その場合はある程度の収入や資産を持っていた方が、連帯保証人の変更を差し替えしやすくなります。
当然に金融機関の審査がありますので、通過できそうな親族を選ぶのは必須となります。
その他、任意売却する方法もあります。
任意売却は、不動産会社や不動産コンサルタントが、債権者(金融会社)と債務者を仲介して売却する方法です。
通常であれば、不動産に担保のための抵当権が設定されています。
抵当権が設定されていれば売却することは出来ませんが、仲介業者の交渉により外してもらい売却する方法になります。
しかし、オーバーローンであれば当然に債務も残り、支払っていく必要があります。
連帯保証人は外れたとしても、残債務を支払っていくことについては、よく話し合いが必要です。
その他、任意売却にはデメリットもあるため、慎重に検討する必要があります。