- 任意売却後の残債ローン
- 連帯保証人が支払う必要はある?
- 任意売却と離婚
任意売却をしても残債務は残ります。
しかし多くの人は、任意売却すると借金もなくなると勘違いしてしまいます。
住宅ローンの残債務や連帯保証人、離婚などとの関連をお伝えしていきます。
任意売却後の残債ローン

任意売却とは、住宅ローンが支払えなくなった場合に、不動産業者や不動産コンサルタントが債権者と債務者の仲介をして、市場価格で売却する方法です。
通常は住宅ローンが支払えなくなると、金融機関から電話や書面で催促されることになります。
それでも返済がされない場合は、期限の利益が喪失して、保証会社が金融機関に代位弁済します。
大体6ヶ月が目安になるでしょう。
(期限の利益の喪失)第137条
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
引用:民法
代位弁済した保証会社は、債務者に一括での返済を要求します。
しかし、当然に支払えるはずもありません。
次に保証会社がとる行動は、裁判所に競売の申立てをすることです。
住宅を競売にかけて、少しでも現金を回収することが目的です。
ところが、競売は市場価格の5割~7割程度の金額でしか売れないため、その分債務も残ってしまいます。
しかも競売申立てには費用も掛かります。
しかし、任意売却だと費用も掛からず市場価格で売買が可能なため、回収率がアップすることになります。
よって、双方に好都合なのが任意売却です。
これに関しては、住宅金融支援機構でも任意売却を勧めています。
融資住宅等の任意売却
住宅金融支援機構におきましては、返済の継続が困難となり、お客さまのご事情からやむなく返済継続を断念せざるを得ない場合には、融資住宅等の任意売却をすることで残債務を圧縮していただくこともご検討いただいています。任意売却は、不動産競売のように法的手続による強制的な物件処分ではないため、お客さまはもとより、仲介業者のみなさまにも円滑な任意売却の実施に向けてのご協力が必要となります。
出典:住宅金融支援機構HPから抜粋
残債務の返済
次に問題になるのが、任意売却後の残債務です。
当然に残った債務は、返済方法を債権者と相談の上、支払っていくことが必要になります。
任意売却を保証会社との間で行ったとしても、その後の債務は債権回収会社(サービサーなどと呼ばれています)に売却されることが殆どです。
そのように、任意売却後の残債務は不良債権として扱われます。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼することで、債権回収会社と交渉し返済額の減額が可能な場合があります。
なぜ減額が可能かというと、元々が不良債権のため、保証会社から債権回収会社に割安で譲渡されています。
よって、一部でも回収出来れば債権回収会社は利益になるからです。
連帯保証人が支払う必要はある?

任意売却後も、残債務額があれば返済しなければならない事をお伝えしました。
次は連帯保証人がいる場合について解説していきます。
任意売却をする場合は、連帯保証人の同意が必要になります。
特に任意売却の価格についても了承を得ることが重要です。
その理由は、残債務があれば、連帯保証人も支払う義務があるからです。
保証人には連帯保証人と保証人があります。
保証人は抗弁権がありますが、連帯保証人には抗弁権がありません。
よって、債権者に返済を求められれば、債務者同様に連帯保証人も返済する義務があります。
(催告の抗弁)第452条
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
引用:民法
このように保証人であれば「先に債務者の方に請求して!」と言えますが、連帯保証人の場合は抗弁権がありませんから、債権者から請求されれば、支払う義務があります。
また、任意売却の場合は連帯保証人の同意を必要としますが、競売では同意など一切不要のまま進行していきます。
当然に残債務があれば、債務者同様に支払う義務があります。
もし債務者が自己破産すれば、全ての残債務を連帯保証人が引き受けることになってしまいます。
任意売却と離婚

住宅ローンを組む際に、夫婦で共有名義や連帯債務者、連帯保証人になっている場合が多く見られます。
その場合、離婚に際して少々面倒なことになります。
特に問題になるのが離婚後の債務不履行です。
住宅を処分せずに離婚して、後日返済ができなくなって連帯保証人に請求がくる、という事態もあり得ます。
連帯保証人は例え離婚したとしても、その義務を逃れることは不可能だからです。
例えば、妻と子供が住宅に住み、夫名義で夫がローンを支払っている場合は、夫が住宅ローンの返済を滞れば、妻と子供が住めなくなる危険性があります。
また、夫婦共有名義で連帯保証している場合、どちらが住んでいるにしても、連帯で支払う義務はなくなりません。
このような住宅ローンのトラブルを回避するためにも、離婚前に任意売却することが望ましいでしょう。
離婚してしまうと、お互いに連絡を取るなどの接触を避ける傾向にあります。
出来ればもう関わりたくないのが正直なところです。
そのためにも、離婚協議の話し合いの中で、任意売却についても検討しましょう。
そのままにしていて、最悪だと相手が返済出来なくなり自己破産すれば、全ての請求が連帯保証人に及ぶことになります。
通常の売買であれば、不動産に設定されている抵当権を外すことはできませんが、任意売却なら債権者の了承を得る事で担保を外すことが可能です。
しかし、任意売却することには、大きなデメリットもあります。
例え連帯保証人であっても、個人信用情報機関(ブラックリスト)に登録されることになります。
5~10年程度は、新規のローンを組んだり、カードを作ることが出来なくなります。
連帯保証人の個人信用情報にも、傷がつくことになります。