スーツ代 特定支出控除 確定申告

  • 特定支出控除とは?
  • 特定支出控除の利用率
  • 特定支出控除のスーツ代

税制改正により、2014年から特定支出控除の基準が拡大され、給与所得者の節税対策として知られるようになりました。

特定支出控除とは何か?特定支出控除とスーツ代の関係についても、詳しくお伝えしていきます。

特定支出控除とは?

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知名度の低い特定支出控除ですが、サラリーマンが実際に利用できるものなのでしょうか?

特定支出控除を正確に説明できる人は何人いるでしょうか?

 

インターネットで検索すると、給与所得者の節税と題し、この特定支出控除が登場します。

 

特定支出控除とは、1年間に仕事のために自費で支払った合計が、ある一定の基準を超えている場合に適用されるものです。

 

通常、企業や個人事業主には経費の計上が認められています。

 

その代わりに、サラリーマンに対しては給与所得控除があります。

【平成29年分給与所得控除】

  • 1,800,000円以下
    :収入金額×40%
    ※650,000円に満たない場合には650,000円
  • 1,800,000円超3,600,000円以下
    :収入金額×30%+180,000円
  • 3,600,000円超6,600,000円以下
    :収入金額×20%+540,000円
  • 6,600,000円超10,000,000円以下
    :収入金額×10%+1,200,000円
  • 10,000,000円超える場合
    :2,200,000円(上限)

給与収入を基準に、上記の表の通り計算し控除されます。

 

通常は年末調整や確定申告の際、この給与所得控除とせいぜい扶養控除や保険料等の控除、医療費控除をする程度でしょう。

 

それが慣習的になっているため、特定支出控除にあやかりたいと思うのは、少人数に限られてしまいます。

 

特定支出控除の内容をご紹介すると、次のようになります。

  1. 通勤費
  2. 転居費(転任に伴う引越し費用など)
  3. 研修費(資格取得以外で、仕事に直接必要な技術や知識を身につけるための支出)
  4. 資格取得費(職務に必要な資格所得。弁護士や会計士・税理士なども含む)
  5. 帰宅旅費(単身赴任者が自宅に帰る旅費など)
  6. その他勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費など)

 

しかし、特定支出控除には基準があります。

  1. その年の給与所得控除額の1/2を超える金額
  2. 会社の証明書が必要
  3. 支出した金額を証明する書類が必要
  4. その他の勤務必要経費は65万円が上限

 

特定支出控除の利用率

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実際に特定支出控除を利用している人は、どの程度いるのでしょうか?

国税庁の統計によると、平成28年度の「民間給与実態統計調査」の結果では、給与所得者数が57,442千人でした。そのうち、特定支出控除を利用したのは僅か1,522人です。

 

特定支出控除の見直しがされる平成24年度以前は、特定支出控除を適用した人数はほぼ一桁でした。

 

税制改正された後の平成25年は1,600人、平成26年は2,000人余りに増加したものの、決して多い数字ではありません。

 

その後も平成27年は1,845人と、人数は大きく増えることがありません。

 

そもそもこの特定支出控除は、特定の支出負担を余儀なくされるサラリーマンを考慮するものとして、1978年(昭和62年)に創設されました。

 

しかし利用率が低く、条件の拡大がされてもなお、その人数は増加が見られない実態があります。この数字を見ても、特定支出控除はハードルが高いことが分るでしょう。

 

利用者が伸びない理由として、雇用先の証明書をもらう必要性があるからです。特定支出控除には専用の申請用紙があります。

 

国税庁のHPからダウンロードすることができ、各費用別に様式が分かれています。

 

衣服費を例にとると、次のような項目になります。

【平成〇〇年分特定支出(勤務必要経費(衣服費))に関する証明の依頼書】

私の購入する次の衣服が職務の遂行に直接必要なものであること等を証明してください。

  • 氏名
  • 住所(又は居所)
  • 衣服の種類
  • 職務の内容
  • 給与等の支払者により補塡される部分につき所得税が課されない部分の金額

これらを記入して、給与支払者(勤務先)から証明をもらうことになります。

 

特定支出控除は、勤務先の了承が得られなければ成り立ちません。

 

自費で仕事に必要な支払いをしているのは、限られた人だけになるでしょう。

 

特定支出控除のスーツ代

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「スーツ代も特定支出控除で節税!」インターネットでよく目にしますね。

これまでの説明でもお伝えしたように、特定支出控除は非常にハードルの高いものです。そんな中、スーツ代を経費にするのは限りなく厳しいことです。確かにサラリーマンにとってスーツは定番中の定番です。

 

業種にも多少左右されますが、スーツは仕事をするうえでのエチケットとされています。特に営業職は、慣習的にも着用が必須となっていることが多いでしょう。

 

例えばそのような営業職が、5万円のスーツを毎月1年間購入しても、60万円にしかなりません。だからと言って、10万円を下らないブランドスーツを購入しても、会社は贅沢としか判断してくれません。

 

計算すると意外に少ない!

特定支出控除は所得計算上の控除のため、実際に計算された金額を見ると「えっ?」と驚く程です。

 

年収が500万円&特定支出額が80万円の場合

例えば、年収500万円のサラリーマンが、特定支出の合計が80万円あったとします。

年収500万円の給与所得控除を計算すると以下のようになります。

給与所得控除の計算

5,000,000円×20%+540,000円=1,540,000円

1,540,000円が給与所得控除の金額になります。

特定支出控除の基準では、給与所得控除の1/2を超える金額になりますから1,540,000円÷2=770,000円になります。

 

800,000円-770,000円=30,000円

 

確定申告することによって30,000円を所得から控除し、再度計算して差額分が還付されることになります。

【所得税の速算表(平成27年分以降)】

  • 195万円以下:5%
  • 195万円を超え330万円以下
    :10%-97,500円
  • 330万円を超え695万円以下
    :20%-427,500円
  • 695万円を超え900万円以下
    :23%(636,000円)
  • 900万円を超え 1,800万円以下
    :33%-1,536,000円
  • 1,800万円を超え4,000万円以下
    :40%-2,796,000円
  • 4,000万円超える
    :45%-4,796,000円

ここでは分かりやすく、給与所得控除の他に控除がないと仮定して説明します。

 

年収が500万円の場合、先ほど計算したように給与所得控除は1,540,000円でした。

 

よって課税所得金額は、5,000,000円から給与所得控除の1,540,000円を差し引いた3,460,000円になります。

所得税の計算

3,460,000円×20%-427,500円=264,500円

264,500円が所得税になります。

では、その後特定支出30,000円が控除されて、再度計算し直したとします。

特定支出控除の計算

3,460,000円-30,000円=3,430,000円

3,430,000円×20%-427,500円=258,500円

その差は6,000円です。自腹で仕事のために80万円使ったとしても、僅か6,000円の還付にしかなりません。

 

以上、スーツ代の特定支出控除についてお伝えしてきました。

 

特定支出控除は給与所得者の控除になりますから、青色申告にはなりません。

 

医療費控除などと同様に、確定申告することで控除が可能になります。