- 特定支出控除とは?
- 特定支出の対象
- 会社からの証明書が必要?
特定支出控除について聴いたことがあるでしょうか?
意外に知らない方が多いと思います。
給与所得者に対する控除になりますが、詳しく解説していきます。
特定支出控除とは?

特定支出控除とは、給与所得者(サラリーマン)でも経費が控除される制度になります。
つまり、所得金額から差し引くことができる制度です。
特定支出控除は、所得税法等の一部を改正する法律として、昭和62年に給与所得者の特定支出の控除の特例(所得税法第57条の2)により創設されました。
何度かの改正により範囲の拡大もしてきています。
特定支出控除について、国税庁のホームページでは次のように掲載しています。
解釈が少々難しいかもしれませんが、簡単に説明すると、会社勤務のサラリーマンなどは、勤務先で所得について申告してもらえます。
源泉徴収票をご覧いただくとよく分かりますが、給与所得控除後に所得が算出され、その所得から社会保険料控除や生命保険料控除・地震保険料控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などの所得控除が差し引かれて課税所得が決定します。
特定支出控除は、給与所得控除額の2分の1を超える金額であれば、特定支出控除が可能ということです。
よって、医療費控除のように、自身で確定申告する必要があります。
先ほどもお伝えしましたが、何度かの改正があります。
平成28年度では、給与等の収入金額が1,500万円以下と1500万円超えとに分類され、次のように定められていました。
【平成28年度】
- 給与収入1,500万円以下:その年中の給与所得控除額×2分の1
- 給与収入1,500万円超:125万円
しかし29年度以降は一律、特定支出の合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える場合、その超える部分の金額を給与収入から控除できるとなりました。
特定支出控除の対象

どのようなものが、特定支出控除の対象になるのでしょうか?
詳しく確認してみましょう。
【給与所得者の特定支出控除】
- 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
- 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
- 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
- 職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
- 単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
- 次に掲げる支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限ります。)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの (勤務必要経費)
(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)
これらは当然に、勤務先から支給されている場合は対象にはなりません。
あくまで個人で負担したものに限ります。
また、4.の資格取得費は、平成25年以後は弁護士、公認会計士、税理士などの資格取得費も特定支出の対象となりました。
それ以前は自動車免許や簿記、英語検定などに限られていました。
6.(1)の図書費は、職務関連の本や雑誌も認められており、新聞なども対象になります。
また、6.(2)の衣服費にはスーツなども対象になっています。
会社からの証明書が必要?

特定支出控除の対象になるものをお伝えしましたが、実はこれら全ては、勤務先の証明が必要になります。
勤務先が承諾しなければ特定支出控除は出来ないことになります。
証明書の様式は決まっており、国税庁のホームページからもダウンロードできるようになっています。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/871222/01.htm
当然に会社からの証明書と一緒に、領収書などの証明書類も必要になります。
具体的な特定支出控除の計算をすると、次のようになります。
収入が500万円の場合で、特定支出額が40万円を例に計算していきます。
【平成29年度分給与所得控除】
1,800,000円以下:収入金額×40%(※650,000円に満たない場合には650,000円)
1,800,000円超え3,600,000円以下:収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超え6,600,000円以下:収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超え10,000,000円以下:収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超える場合:2,200,000円(上限)
(例1)
5,000,000円×20%+540,000円=1,540,000円
1,540,000円÷2=770,000円
400,000円-770,000円=▲370,000
基準より370,000円も少なく、特定支出控除を受けられる金額に達していません。
この場合770,000円以上の特定支出控除額であれば、確定申告して控除することが出来ます。
では、上記が収入200万円であればどうでしょうか?
(例2)
2,000,000円×30%+180,000円=780,000円
780,000円÷2=390,000円
400,000円-390,000円=10,000円
この場合は、10,000円を特定支出控除として確定申告することが可能になります。
以上のように、400,000円自己負担したとしても、10,000円しか控除が出来ないことになります。
案外ハードルが高いことをご理解頂けたと思います。
また、どこまで勤務先が特定支出控除額として承諾してくれるかも、重要になります。
よく確定申告の時期になると、サラリーマンのスーツ代が特定支出控除の対象になると、インターネットの記事でも見られます。
確かにサラリーマンのスーツは消耗品になります。
しかし、上記のように相当の金額を使っていなければ、特定支出控除額には達しません。
サラリーマンが着用する一般的なスーツは、ブランドスーツと違い何十万もしませんから、特定支出控除の恩恵を受けるのは難しいことになります。
しかも、勤務必要経費は65万円までという上限があります。
よって、衣服費に限らず、他に特定支出控除の対象になるものを、探してみるのも良いかもしれません。
または、別の方法で節税することをお勧めします。
個人事業主の脱税や税務調査について
>>特定支出控除は会社からの証明書が必要?スーツ代の他には何が対象になる?