脱税 申告漏れ 幇助 刑事罰 刑事告発

  • 脱税・所得隠し・申告漏れ
  • 刑事告発の基準
  • 脱税の幇助は刑事罰?

個人であっても企業であっても、収入や売上には必ず税金が加算されます。

正当な税金を納めない行為には、ペナルティーが課されることになります。

 

脱税・所得隠し・申告漏れ

脱税・所得隠し・申告漏れは、同じように捉えられる事が多いですが、そこに至る経緯によって意味合いが違って来ます。

 

脱税や所得隠しは、故意に納税額を減らす行為です。不正行為により租税を免れる行為をしたとき、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処せられます。

 

一方申告漏れは、単なる事務処理のミスであり、悪意はありません。

 

また、インターネットの普及による、アフリエイトなどの広告ネットワーク収入も、当然に課税対象になります。

 

しかし、このような副業の申告が漏れていることが多数あります。

 

インターネット通販や株・FX取引も、申告自体をしていない無申告事案が増加していると言います。

 

ネット収入は単純な事務処理ミスとは違い、確信犯的要素が強く、脱税犯の一種として立件されやすくなっています。

 

税を逃れるために故意に申告書を提出しなかった場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に課せられます。

 

刑事告発の基準

一般的に告発や起訴される事案は、1億円以上の脱税が基準と言われています。

 

そのうち実刑判決になるのが、3億円以上の脱税という基準がありますが、これはあくまで目安でしかありません。

 

少額でも悪質な場合は有罪判決を受け、罰金または懲役の刑を科することになります。

 

国税庁では、毎年6月に前年度の「査察の概要」を発表しています。平成28年度は、過去5年間で最も多くの告発をしています。

 

査察調査に着手した件数は、57件でした。そのうち検察庁に告発した件数は41件で、告発率は62.1%です。

 

また、平成28年に処理した査察事案に係る脱税額は総額で50億円、うち告発分は35億円でした。

 

建設業や不動産業に加え、近年増えているのが太陽光発電に関連する業種や、震災復興関連の事案です。

 

平成28年度に査察調査して、懲役3年の実刑判決になった事例をご紹介すると、投資運営会社に投資者を紹介して、手数料を得ていたA・Bの2社がありました。

 

A社は、会社名義の預金口座に振込入金された収入だけを申告して、その他の脱税した不正資金を投資に充てていました。

 

B社は一切の申告をしないで、お金は親族の貸付金に充てていました。いずれも過少申告で、法人税法違反の罪により実刑判決を受けました。このように悪質な隠ぺいによる脱税は、刑事告発の対象になります。

 

査察には強制調査・任意調査の2種類ある

先ほどお伝えしたような査察は強制調査と言い、国税局査察部が脱税金額の大きく悪質な納税者に実施する調査になります。

 

国税局査察部は通称マルサなどと呼ばれていて、テレビドラマや映画でも有名ですね。マルサは最終的には、検察庁への告発を目的としています。

 

一方、1億円未満の脱税が疑われる場合は、税務署の調査部門が担当することになります。

 

任意調査といい、原則、事前の連絡があります。実は納税者へ連絡をする前に、税務署は事前調査をしていると言われています。

 

次のようなことをチェックしています。

  • 過去5年程度の申告の内容確認
  • 過去の税務調査の有無
  • 取引先のチェック
  • 外観の調査及び内定調査

遡って過去の申告内容を見ることで、異常な数値が無いか確認をしています。また、過去に税務調査を受けているかも重要なポイントです。

 

取引先をチェックすることで、金額の相違が見つかることがあります。外観の調査は、代表者や事業主の生活感を確認しています。

 

例えば豪邸に住んでいるとか、外車など高級車を所有していないかをチェックします。飲食店などは内定調査をして、会計や現金処理の様子を確認しています。

 

脱税の幇助は刑事罰?

度々繰り返しますが、脱税は法人税法違反159条1項により、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金になります。

 

では、脱税の幇助も罪になるのでしょうか?実は、他人の脱税に手を貸しても罪に問われることになります。

 

それは、企業の依頼を受けている税理士にも言えることです。

 

脱税の相談を行うことは勿論のこと、幇助は懲戒処分を受けるほか、刑事罰を科される措置も講じられます。

(脱税相談等の禁止)税理士法第36条

税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない。

引用:税理士法

税理士法第45条(脱税相談等をした場合の懲戒)により、2年以内の税理士業務の停止又は、税理士業務の禁止の処分を受けることになります。

 

同法36条では、「税理士は、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、

 

又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない」と規定しています。

 

税理士法58条(罰則)では、これに違反した者に対して、3年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられるとしています。

 

税理士以外が脱税の幇助をしたら?

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特別背任罪(とくべつはいにんざい)

という言葉を聞いた事があるでしょうか?

特別背任罪とは、発起人、取締役、会計参与、監査役、執行役、支配人、事業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた

 

使用人、検査役、清算人などが、自己もしくは第三者の利益をはかり、または株式会社に損害を加える目的でその任務に背く行為をいいます。

 

会社法第960条では、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金に処すると定めています。

 

同様に法人税法第159条1項でも規定されています。

更に、領収書や文書の偽造をした場合は、刑法第159条3項の「私文書偽造等」に該当する可能性もあります。

(私文書偽造等)第159条

  1. 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
  2. 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
  3. 前2項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

引用:刑法

このように幇助であっても、脱税に関与した者は刑事罰に科せられることになります。

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